~~あらすじ~~
八十四日間の不漁に見舞われた老漁師は、自らを慕う少年に見送られ、ひとり小舟で海へ出た。やがてその釣綱に、大物の手応えが。見たこともない巨大カジキとの死闘を繰り広げた老人に、海はさらなる試練を課すのだが――。自然の脅威と峻厳さに翻弄されながらも、決して屈することのない人間の精神を円熟の筆で描き切る。著者にノーベル文学賞をもたらした文学的到達点にして、永遠の傑作。
(文庫版裏表紙より)
以下ネタバレありの感想です↓
ヨルシカさんがオマージュして話題となった老人と海。
世界的にも有名な作品でもあり、題名だけ知っている方も多いのではないでしょうか?
「老人と海」というシンプルなタイトルですが、内容はとても情熱的で読めば読む程この世界観に引き込まれていきます。
あらすじの通り、漁師のサンチャゴは見たこともない巨大カジキとかなりの時間をかけて勝負します。それこそ何日とかけて。
最後の方はサンチャゴとカジキの根比べのようになっていきます。
読んでいるだけなのに自然と手に汗握るような緊張感がひしひしと伝わってきました。
そして、死闘のすえ、カジキを吊り上げるサンチャゴ。
水や食料も付きかけ、村へ帰ろうと船を動かします。
しかし、現実はそう甘くはなく、何度かカジキ狙いのサメに襲われます。
サンチャゴも抗いますが、村へ帰るころにはカジキはほぼ骨だけとなっていました。
何日もの努力が全て無駄になるような感覚、一種のやるせなさや何故こんな事になってしまったのだろう……。という思いから読んでいてとても悲しくなりました。
村へ到着し、カジキの骨を見た村人は、頭のでかさだけでもとても立派なカジキだったと感心します。ですが、サンチャゴは自身が住む小屋へ戻り、寝てしまいます。
何日にも及ぶ勝負の末、釣り上げた巨大なカジキ。
これだの大物ならしばらく暮らすのには困らないと思っていたものの、現実はそう甘くはありませんでした。
この本を読み終えた時、一種のやるせなさといったら……。
サンチャゴの気持ちを考えると、悲しみややるせなさ、海へ畏敬等様々な想いが駆け巡っていきました。
漁に出て餌を仕込んでいる時、カジキと対峙している時、常にサンチャゴは海へ畏敬の念を抱いていました。
そんな彼が海に打ちのめされてしまう展開は自然界の厳しさを痛感させられました。
何度考えてもやはりやるせなく、「物事が理想通りにいくことはそうそうない」という目をそらしたくなる現実を突きつけられるような感覚です。
時間をかけたものが徐々に崩れていき、結局は何も残らない。
そういったことだってあるし、世の中何もかもが理想通りいくわけではない。
そう改めて思い知らされたような気がします。
逆を返せば、思い通りいかない事や理想通りに事が運ばないことだってある。
そこからどうしていくかが大事。とも受け取れる作品のような気がします。
そして、きっと読む人それぞれで感じ方の違う作品なのではないかと思います。
それだけ世界観が圧倒的で、それでも物語は激しく、でも凪いだような海のような静けさもある情熱的な作品でした。
読み手によってどう感じるかが変わるのがまた面白い作品で他の人の感想も読んでみたくなりました。
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